業界再編を通じて、日本社会の課題解決に挑む
澤 陽男ときわヘルスケアサービス代表取締役社長
JPiX執行役員
2013年6月入社
「総合格闘技」で経営に向き合い、事業の本質に迫る
大手法律事務所で事業再生やM&Aを担当していた時に、IGPIが手掛ける東北地方のバス会社や大手航空会社の再生プロジェクトに参画したことが、キャリアの大きな転機となりました。法務のスペシャリストとしてキャリアをスタートさせたものの、弁護士の仕事が債権・債務の調整などバランスシートにしか踏み込めていないことに焦りを感じるようになりました。ビジネス、ファイナンス、リーガルという幅広い知見を駆使しながら、「総合格闘技」として経営に向き合わなければ、事業の本質的な価値向上に貢献することはできないと思ったのです。そうした問題意識を抱えて、IGPIの門を叩くことにしました。
ローカル経済圏の再生を目指して
IGPIに入社した後、IGPIグループ会長の冨山和彦さんが幹事をしていた経済同友会に、冨山さんの「カバン持ち」として参加する機会を得ました。「日本を変えたい」という思いで、弁護士を経験してから政治家へ転身する道を考えた時期もあったので、政財界をつなぐ役割の一端を担えたことはとても勉強になりました。しかし、何よりも、冨山さんがその時期に発信していた「G(グローバル)企業とL(ローカル)企業」をテーマにした提言に共感しました。GDPのボリュームゾーンはローカル経済圏にあるので、地方産業が直面している非効率や低生産性を、事業再生や産業再編を通じて改善していくことが重要であるという考え方です。自分自身も経営人材として事業再生や業界再編に取り組み、地域社会が抱える課題を解決していきたいと考えるようになりました。
経営力を高め医療や介護が抱える課題を解決する
2020年、IGPIグループとして日本共創プラットフォーム(JPiX)の立ち上げに参画する機会を得ました。JPiXは、ローカル産業の有望な中堅・中小企業へ恒久的・長期的な投資を行い、自らが経営主体として「稼ぐ力」を高めることでローカル経済の持続的成長にコミットする組織です。地域社会が抱える課題を解決していきたいという思いを、長期投資という手段を用いて実現できると思いました。
2023年にはJPiXのヘルスケア案件の統括を任され、新会社「ときわヘルスケア」の社長に就任しました。「医療は産業ではない」との指摘もありますが、持続可能な医療・介護サービスを提供していくためには、ビジネスとして成り立つことも重要です。すなわち、職員に対する賃金向上に応えられる収益を生み出さないと人材採用はできませんし、将来に向けた設備投資等を賄えるだけの収益性を生み出さなければ施設の修繕や建て替えを持続的に行っていくことはできません。IGPIが実績を積んでいる経営スタイルを、医療・ヘルスケアの分野に落とし込み、生産性改革を実現していけば、持続可能な医療・介護サービスは実現可能だと思っていますし、今はそれを日々考え、チャレンジしています。
日本経済のミッシングパーツは、長期資金の投下と経営人材の輩出を行うプレーヤーであり、この2つの役割を果たしているのがIGPIグループです。短期的な利益を追求すると、どうしてもトレードオフが生じます。従業員の給料を減らしたら株主が儲かる、あるいは、設備投資を減らしたら株主が儲かりますが、それでは本質的に事業は良くなりません。これに対し、時間軸を短期から長期にずらすことによって、トレードオフがトレードオンになります。つまり、従業員が働き続けたいと思える組織体制や事業の仕組みを構築することによって、ステークホルダーが長期的な利益を追求することにベクトルを合わせることができます。これがあるべき姿であり、これを実現することで、日本の社会を変革できると信じています。
実現したい理想を掲げ、自ら行動できる人材を求む
IGPIグループの起源は産業再生機構にあるので、パブリックマインドを持って仕事に取り組めるところも魅力です。IGPIグループには、会社の利益と公益を両立させたいという志を抱いて集まってくる人材が多いです。社内で成果を出している人たちに共通しているのは、自分が実現したい理想を掲げ、自ら行動できることです。仕事は上から降ってくるものではなく、取っていくものです。
また、一つの専門分野に特化して早く成果を出すことばかりを考えるより、好奇心の幅を広げて、さまざまな経験を重ねて真の経営人材として成長するほうが、IGPIというプラットフォームを活用するにはふさわしい考え方だと思います。スティーブ・ジョブズの言葉に「connecting the dots」がありますが、私自身も前職およびIGPIのプラットフォームの上で様々な経験をしてきました。例えば、PE投資、ベンチャー投資、投資先ハンズオン支援、投資先役員、M&A、大企業向け戦略コンサル、新規事業開発、IGPI上海オフィス、事業再生、コーポレートガバナンス、政財界活動等々の様々なdotsを置いてきました。そして、「日に新た」な気持ちで成長しようと日々の仕事に取り組んできたことが、今では点と点が繋がって自分のキャリアが形成されています。
漠然と「今の日本はイケてない。社会を変えたいな。」と思っていた学生時代から、事業再生や業界再編でのキャリアを歩む中で、「社会が良くなり、みんながもっと豊かに幸せに生活できる社会の実現」という目指すべきゴールの輪郭とその道筋がはっきりしてきました。IGPIグループで一緒に仕事をしていた人たちの中にはIGPIの外で新たな挑戦をする人も多く、私自身にも誘いはありましたが、「自分が何をしたいのか」を考えると、自分のミッションを達成するための組織として、IGPIグループが一番フィットしていると感じています。
※IGPIグループが運営するオウンドメディア「IGPI VOICE」より転載